あなたと恋の始め方①
 小林さんは私が焦っているのに気付かずに、ガシガシと頭を拭きながら私の方に歩いてくる。バスローブの合わせの所から肌が見えて艶かしい。こんなにもイヤラシイ女だったのだろうかと思ってしまうけどだった。



「ちょー気持ちよかったよ。美羽ちゃんも浴びておいでよ。スッキリした方がいい。足の疲れも治るよ。きっと」


 当の本人である小林さんはシャワーを浴びて気持ちよかったのかご機嫌だった。タオルの向こうには濡れた髪が艶やかに部屋のダウンライトに光っている。肌理の細かい肌に掛かる髪をかきあげる仕草にドキドキする。無意識にこういう姿を見せるのは反則。その姿に見とれてしまう私がいる。小林さんは端正な顔立ちをしているし、誰よりも素敵だと思っているけど、こんな風にしていると、いつもの爽やかさの中に男らしい色香を感じる。


 それが私の心臓を壊しそうになる。


「ん?何かついてる?」

「格好いいなって思ったんです。うん。とっても綺麗です」



 私の言葉に小林さんは大笑いした。私は普通に自分の小林さんに対する意見を言っただけなのに、それが小林さんのツボに入ったみたいで、小林さんは爆笑し始めたのだった。でも、私は真面目だった。私の恋心の欲目を除いても小林さんは綺麗だし、魅力的。それは間違いない。


 この素敵な人が私の初恋の人で二度目の恋の人。


 初めて恋をした人に私は今日抱かれる。

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