あなたと恋の始め方①
 複合型の映画館はたくさんの映画が上映されている。


 時間的にちょうどいいのは恋愛もので、その次が少し待って、アクションもの。ホラーやスプラッター系は私の中では選択肢にはない。小林さんはどんな映画がいいのだろうか?イメージ的にはアクション系という感じだけど、私には小林さんが何を好きなのか分からなかった。


「美羽ちゃんはどんなのが好きなの?女の子だから恋愛もの?」


「小林さんはいつもどんなのを見ますか?」


「俺?うーん。何でも見るかな。恋愛でもアクションでもなんでも。だから、美羽ちゃんが見たいのでいいよ」


 見たいのでいいよ。
 そう言われて本気で困ってしまった。


 時間をとって恋愛ものを取ってもいいけど、もしも号泣してしまったらどうしよう。かと、言ってアクション物は大きな叫び声を上げてしまいそう。


 選べない。


 というか…。ここまで来て映画館が苦手とも言えない。自分の気持ちが抑え切れる自信がない私は…どれにしようかと悩む。


「うーん。恋愛もアクションも微妙だね。映画は止めようか?美羽ちゃんもあんまり乗り気じゃないでしょ」


「え?」


「本当は映画館が苦手とかじゃないの?さっきから、妙にキョロキョロしているし」


「映画は好きなんです。でも、映画を見るとその映画に感情移入しすぎて泣いたりしてしまうから、映画館は苦手なんです」


 


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