あなたと恋の始め方①
「律は昔から本当に変わらない」


 そう言った小林さんの表情は本当に清々しくて、眩しく感じる。高校生の時の小林さんはどんな人だったのだろうか?素敵な容姿からしてもモテたのは間違いないと思う。



 思い出すのは私が小林さんを初めて見た高校野球のテレビ中継だった。


 勉強しか興味のなかった私が一目見て恋に落ちるほどの爽やかさを感じさせていた。そんな小林さんの高校時代は華やかなものだったと思う。聞いてみたいような、聞きたくないような。こんなところで自分の好奇心の強さに驚く。研究をするからこその探究心はこんなところでも発揮されてしまう。


 後悔するのは分かっているのに。


「高校生の時の小林さんってどんな感じでしたか?」


 一ノ瀬さんは一度小林さんの方を見てから私の方を見つめた。でも、その唇から零れたのは私の聞きたい答えではなかった。でも、聞けて嬉しい答えでもあった。


「みんなの憧れの先輩でした。野球部の中でも小林先輩を尊敬しているものは多くて、俺もその一人です。先輩のストレートも変化球も結局打てなかったんです。ピッチングの練習をするときだけ、俺たち後輩もバッターボックスに入れるのですが、小林先輩の球を打つことは一度も出来なかったです。スピードのコントロールも俺が知る限り最高だと思います」


 一ノ瀬さんは真面目な人なのだろうと思った。でも、小林さんの後輩らしいとも思う。

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