あなたと恋の始め方①
「蒼空先輩も律くんの味方なんですね。わかりました。今日は恋愛映画はやめてアクション映画にします」


「は?なんで、今日はのどかの好きな女優さんの出る映画だろ。テレビのコマーシャルで言っていた『きっと私は強く生きていける』って台詞を大画面で見たいって言ってたろ」


 この一ノ瀬さんと言う人。台詞を覚えられないと言いながらもしっかりと覚えている。大事なことだけは押さえている人だと思った。それにしても、この二人のやり取りを見ながら私は羨ましいと思ってしまった。長年付き合っているのだろうから、醸し出す雰囲気と言うのがあるのは分かるけど、自然なやり取りに『私は小林さんとこんな風に時間を過ごしたいと思った。


「ほら、恋愛映画を見て来い。今日は律も寝ないよ。のどか、楽しんでおいで」


 やっぱり小林さんの言葉は優しくてのどかさんが小林さんにとってどんな人なのか分かってしまった。こんな時に思うのは変だけど、女の勘は鋭いのだと思う。恋に疎い私でも大好きな人のことはわかる。


 小林さんの視線。
 小林さんの優しい声。
 思いやるような言葉の数々に…。


 小林さんは昔、のどかさんのことが好きだったのではないかと思った。それは核心に近いと思う。



「じゃあ、時間があるので失礼します。OB会で会えるのを楽しみにしています」


「ああ。じゃあな」

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