I'm crazy about you.
2:京輔
***
今の部署に配属されてから、大抵金曜日は接待。
する日とされる日と随分気分は違っても、結局の所、拘束されるっていう意味では変わらない。
金曜日はこうして潰れるから、その残業時間分の仕事が土曜に回ってしまうのもいつもの事。
そろそろ次の店へ移動するからと、席を抜け出し会計を済ませた。
手洗いに行って自分の疲れた顔を拝んで、接待の個室へ戻ろうとした時、窓際の席に七海の姿。
瞬時に心臓が跳ねたのは、我ながら素直だと思う。
声を掛けに行きたい気持ちもあったけど、俺の戻りが遅いのを気にして、先輩が前からやって来た。
ほんの短い再会すら、叶わぬ事なのだと思い知った。
少し会わない間に髪型が変わっていた。
それに、少し、痩せた気がする。
楽しそうに笑顔で食事をしている姿を、かわいいな、って思った。
「七海…」
誰に向けた笑顔なのかと相手を見れば、目の前には見た事ない男。
そのかなりイケメンが七海にパスタを取り分けてやっている。
それを受け取った七海が、見慣れたヘヘッ、って照れた時の笑顔を見せた。