I'm crazy about you.
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連れて行かれたのはこれまた雰囲気のいいバーみたいな所。
照明が落とされて、半個室みたいな店だった。
「克哉さん彼女いるんスか?」
お疲れ、とグラスを小さく掲げて、口をつけた後でおもむろに問い掛けた。
「いや、今はいねぇな」
「今、は?」
「そ、今は。半年前に別れたんだ。四年付き合った彼女に振られた訳」
「四年て…長いッスよね」
「まぁさ、会社入ってからはそんなに頻繁に会ったりできなかったから…四年て言っても微妙だよな」
克哉さんには珍しい苦笑に、俺は掛ける言葉が見つけられなかった。
「んな顔すんな。もう吹っ切れてんだから」
「あの…克哉さん」
「ん?」
「…別れた原因とかって…聞いてもいいッスか?」
俺はふと気になって、気になったらもしかして、と思って聞かずにはいられなくなった。
「お前がもしかして、って思ってる通りだよ」
克哉さんはそう言って、ジントニックをグイッと煽った。