I'm crazy about you.
「お前はさ、どうしたいの?」
不意に真顔で問い掛けられて、俺は息を飲んだ。
「七海とは…あ、彼女ですけど…高校の時からの付き合いなんスよね」
「高校?…随分長いじゃねぇかよ」
「そうッスね…もう…六年近いかも」
「へぇ。お前、意外に一途なんだな」
「んー、まぁいろいろッスよね…一途なのは彼女の方で、俺はね…」
バツが悪くて言葉を濁したのに、克哉さんは水を得た魚みたいに、生き生きした目を俺に向けてきた。
やっぱり、話さなきゃなんないんだろうか…。
「なんだよ?浮気、とか?」
「浮、気つーか…彼女のが先に就職したんスけど。最初の頃なかなか会えなくて…俺、相当文句言ったんスよねぇ」
はぁ?って克哉さんの呆れた目が俺に突き刺さる。
「わ、分かってなかったんスよ!社会人つーもんが!」
「で、浮気したと?」
「つーか、最初は彼女が浮気してんだと思って…結構問い詰めたり?」
「お前の顔で、って考えると恐ぇな…」
「まぁ、それが分かってて問い詰めたんスよ…それまで結構頻繁に会ってたから余計、ね…」
俺は人差し指でこめかみの辺りを掻いた。
「お前意外すぎ」
「そうッスか?」
「あぁ。なんかもっとサバサバしたイメージじゃね?」
「なんか、彼女の事になると冷静じゃなくなるっていうかね…」
「ま、そんだけ惚れてるって事なんだろ?」
克哉さんの言葉に、俺は昔の事を思い出した。