I'm crazy about you.
1:京輔

***


あいつ怒ってんだろうなぁ。


深夜、仕事を終えてようやく帰宅。
本当はシャワーで済ませちまいたいとこだけど、日々溜まる疲れはちゃんと湯ぶねに浸かってとらないと、って七海が言うから。
律儀にも俺は、ちゃんとそれを守ってる。


はぁ、と深い溜息。
濡れた両の手で髪を後ろへ撫で付けるようにして、天井を仰いで目を閉じた。




大学を卒業して今年就職したばかりの俺は、学生の頃とは全く違う日々に慣れるので精一杯。
ありがたくも希望する会社に入って、繰り返し繰り返し新人研修を受けて、ようやく三ヵ月前に今の部署に配属された。
そこは会社の利益に対して大きな役割を担うような、大きなプロジェクトを幾つも抱える、そんな部署で、やりがいがある分、とにかく忙しさは半端じゃなかった。




研修の期間中はなんとか月に一度くらいは会えたけど、この三ヶ月はドタキャンばかり。
最初のうちは仕事だからしょうがないよ、って言ってくれた七海も、さすがに最近は責めるような口調で。


責められてもしょうがないって分かってるからこそ、どうにもできない事がもどかしくて、悪いなぁって思えば思うほど連絡もしづらくなっていく。


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