I'm crazy about you.
京輔の新しいマンションには、まだ三回くらいしか行った事がない。
大学の時に住んでいたアパートからようやく引っ越してくれて、合鍵をくれようとしたんだけど私はそれをいらない、って断った。
もしあの時、合鍵をもらっていたら、マンションで待つ事もできたし、忙しくて疲れている京輔の為に何かしてあげられたのかもしれない。
でも私はあの時、どうしてもそれを受け取る事ができなかった。
二年も経っているのに、合鍵で入った京輔のアパートで見たあの日の事が、どうしても、どうしても忘れられずにいたから。
車をマンションの駐車場に入れる時に一旦離れた手が、歩き出すとまたすぐに繋がれて、優しく引かれる。
なんかこの感覚が久しぶりで、エレベーターで並んだ時に京輔をそっと見上げた。
「ん?」
「な、なんでもない」
「変な奴」
ククッて笑う京輔には、私が赤くなってる事も、ドキドキしてる事も見抜かれてるんだろうな、って思うと少し悔しくて。
でもいいかな。せっかく京輔に会えたんだし。なんか、甘やかしてくれそうな雰囲気だし。
手を繋いだままの状態で、空いている方の手で京輔の腕にギュッと抱きつく。
京輔はそんな私に気付いて、髪をクシャっと撫でてから額にそっとキスをしてくれた。