白と黒、そして白濁
みんなが集まっているテントの外へ出た。
雨はいつのまにかやみ、夕暮れの太陽が沈みそうだった。
すぐ側で川が流れている。誰も話そうとしないので、川の流れる音しかしない。
俺は某の隣で歩を止めた。鈴蘭は俺の斜め後ろで止まった。いや、動けなくなったのかもしれない。
鈴蘭は俺の服の袖を掴んだ。
目の前に波飛がいるんだ。
殴りかかりたい衝動にかられているんだろう。
無理もない。
「おい、そいつが殴りそうになったら止めろ。誰かが一人いけば、みんないっちまう。波飛を殺しちまったら、元も子もないからな」
某が俺に小さい囁くような声で言った。
「ああ、わかってる」
あのとき、俺は驚いた。
みんなを苦しめた波飛をあの場で殺すことだってできた。
でも無理だった。
誰かを殺せば、必ず悲しむ人間がいる。
そのことに気づくことができた。
彼女のおかげで。
俺は波飛の隣にいる白を見た。