白と黒、そして白濁
「なに泣いてんだよ!ほら行こーぜ!」
「あ、ああ」
鈴蘭は波飛の肩を抱いて歩き出した。
「おい白!藤!はやくしろよ!」
鈴蘭は楽しそうに笑っている。
「うん!!」
私もニコニコ微笑んだ。
今、ひとつ気づいた。
「ねぇ藤。鈴蘭、藤のことを兄ちゃんって呼んでないわね」
藤は嬉しそうに笑った。
「ああ。俺のこと、兄ちゃんと似てないってさ。兄ちゃんはもっと優しかったって」
「そう」
私も嬉しくなって微笑んだ。
「俺、あいつの頬をひっぱたいたんだ。いつまでも悲しんでないで、前へ進めって」
「そう!でもそれで、鈴蘭の時間は動きはじめたのね」
「ああ」
藤は鈴蘭に子どもを見守るような優しい視線を向けた。
すると、鈴蘭が気づいて手を振った。
「おーい!はやくいかないとグランソワンが怒るぞー!!」
「ええ!?グランソワンがいるの!?」
「ああ!旅に必要な荷物を運んでくれるやつがいるだろ?
さっ、はやくいこーぜ」
「ええ!」
私はニッコリ微笑んで走った。