白と黒、そして白濁
「そんなの僕の知ったことじゃないよ。その格好からして、金持ちなんでしょ?少しくらい恵んでくれよ」
「私はお金持ちじゃないわ。人を探しているの。黒を知らない?」
「ふんっ。姉ちゃん、知らないの?この国で一番の嫌われものの名前だよ」
少年は私を少し睨んだ。その瞳に少し怖じ気づく。
「知らないの…ごめんなさい」
私は落ち込んでうつむいた。少年はおどおどして私の頭を撫でた。
「ごめんよ、睨んで悪かったよ。つい知り合いかと思って…。黒はこの国の王の名前だよ。黒なんて名前珍しいからつい王かと思ったけど、実際はいっぱいいるかもしれない」
「そうなの…」
私はますます落ち込んでそれ以上話さなかった。
すると少年は責任を感じたらしく、私の手を握って歩き出した。