小路に咲いた小さな花
3
*****
お花屋さんの朝は結構早い。
仕入れた花を選別して箱から取り出して、水切りして、バケツに入れて、彩りと見た目を考えながらお店に並べて……
並べ終わると、親父様はどこかに雲隠れ。
むせ変えるような緑の匂いをまといながらシャッターを開けると、
「おはよう」
通りかがりのコート姿の敬ちゃんを見つける。
「おはよー」
いつもの雰囲気の敬ちゃんがそこにいて、少しほっとした。
「髪に葉っぱついてる、彩菜」
「え。どこ?」
「ここ……」
敬ちゃんの指先がこめかみ触れ、ついていたらしい小さな葉っぱをつまみ上げる。
「ありがとうー」
敬ちゃんが指先で取ってくれた葉っぱを眺めていたら、そのこめかみに暖かくて柔らかい感触。
それから微かに柑橘系の匂いに混じって、クスッと小さな笑い声。
「いってきます。今日は遅いと思う」
「い、いってらっしゃい……」
何故に帰宅時間を私に?
と、言うか、今の何?
駅に向かう敬ちゃんの後ろ姿を見送っていたら、
「彩菜さん! 山本さんと付き合い始めたの?」
喜美ちゃんが顔を真っ赤にして立っていた。
「え。いや、あの」
「だって、今、山本さんチューしてたよ、チュー」
やっぱりそう?
こめかみにキスされた?
間違いない?
ぼんやりしていたら、喜美ちゃんに店に連れ込まれた。
「飲み会で何かがあったんですね? そうでしょ、そうなんでしょ?」
何故か大興奮の喜美ちゃんに、どこか冷静になる。
人は不思議と、興奮している人を見ると冷静になれるのかもしれない。
「もー。それならそうと言ってくださいよー。バイト時間増やしますから」
「え。待って、意味が解らないけど」
「付き合い始めたなら、デートもするんでしょ?」
当然のように言っているけど、解らない。
だいたい、私たち……私たちと言っていいのかも悩むけど、そもそも付き合い始めたの?
お花屋さんの朝は結構早い。
仕入れた花を選別して箱から取り出して、水切りして、バケツに入れて、彩りと見た目を考えながらお店に並べて……
並べ終わると、親父様はどこかに雲隠れ。
むせ変えるような緑の匂いをまといながらシャッターを開けると、
「おはよう」
通りかがりのコート姿の敬ちゃんを見つける。
「おはよー」
いつもの雰囲気の敬ちゃんがそこにいて、少しほっとした。
「髪に葉っぱついてる、彩菜」
「え。どこ?」
「ここ……」
敬ちゃんの指先がこめかみ触れ、ついていたらしい小さな葉っぱをつまみ上げる。
「ありがとうー」
敬ちゃんが指先で取ってくれた葉っぱを眺めていたら、そのこめかみに暖かくて柔らかい感触。
それから微かに柑橘系の匂いに混じって、クスッと小さな笑い声。
「いってきます。今日は遅いと思う」
「い、いってらっしゃい……」
何故に帰宅時間を私に?
と、言うか、今の何?
駅に向かう敬ちゃんの後ろ姿を見送っていたら、
「彩菜さん! 山本さんと付き合い始めたの?」
喜美ちゃんが顔を真っ赤にして立っていた。
「え。いや、あの」
「だって、今、山本さんチューしてたよ、チュー」
やっぱりそう?
こめかみにキスされた?
間違いない?
ぼんやりしていたら、喜美ちゃんに店に連れ込まれた。
「飲み会で何かがあったんですね? そうでしょ、そうなんでしょ?」
何故か大興奮の喜美ちゃんに、どこか冷静になる。
人は不思議と、興奮している人を見ると冷静になれるのかもしれない。
「もー。それならそうと言ってくださいよー。バイト時間増やしますから」
「え。待って、意味が解らないけど」
「付き合い始めたなら、デートもするんでしょ?」
当然のように言っているけど、解らない。
だいたい、私たち……私たちと言っていいのかも悩むけど、そもそも付き合い始めたの?