小路に咲いた小さな花
悪い虫がつかないように……しててくれて、それを誰かにあげるのは癪に障るから。

らしいし。

実際、私に新しい彼氏も好きな人もいないと判断して……

じゃ。自分のにしようかな~?

って、考えたわけでしょう?

……なにか違うよね、何かが。

でも、これはチャンスで、チャンスだけど……

喜美ちゃんが帰ってきて、そっと視線を合わせると、困ったように笑われた。

「えーと。彩菜さん、聞いてもいいですか?」

「お帰り。なぁに?」

「山本さんと付き合ってるなら協力しますけど、そうじゃないならそうじゃないで手伝いますよ?」

手伝うって言われても……

「んー。じゃ、見守っていて」

「ま。そうなりますよね。じゃ、仕事頑張りますか」

「うん」

笑って、無造作に置かれたままの花を綺麗に並べかえていく。

「…………」

花でさえ、綺麗に見えるように並べかえているのに、私……

「え。あれ。彩菜さんどうしました!? なんか急にメチャメチャ落ち込んでますけど」

「なんでもない……」

と言うか、自己嫌悪ですよ~。

綺麗に見せる努力すら怠っていながら、振り向いてくれないし、とか、ウジウジ考えていたわけ?

振り向いてくれないなんて、あったり前じゃないか。

何を当たり前な事を、当たり前に考えなかったかな?

お化粧したり、おしゃれしたり、これって普通はきっと10代で考えるようになることだよね。

喜美ちゃんだって、お化粧するもん。

恥ずかしい!

「喜美ちゃん……」

「はーい?」

「お化粧に目覚めたのはいつ?」

「え……」

びっくりしたような顔で振り返られて困る。

「何でもない。気にしないで」

慌てて手を振ると、今日も喫茶店ポロンに持っていく花を選別し始める。

そろそろ春の花の出番かな。

コーヒーの香りを楽しむ人も多いから、あまり匂いの強い花はNG。

家具は暖かみのあるウッド調だから、派手すぎる花もね~。

「彩菜さん、その気づかいが花以外にも向けばいいのに」

「…………」

そうかもしれないね……
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