小路に咲いた小さな花
4
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「おはよー」
「おはよう」
朝の挨拶はいつも通り。
敬ちゃんはニコニコしてる。
「今日も頭に葉っぱついてる」
「あ。うん。大丈夫」
すかさず逃げると、目を丸くされて微かに笑われた。
この、微かに笑う方が敬ちゃんの地なのかもしれない。
どこか爽やかで、どこか邪悪。
今日もスッキリスーツを着こなして、毎日朝の挨拶を交わして、毎朝人の頭にキスしてから出勤していく。
おかげで昼間のお客様には恵まれるようになったけど、噂話に花まで咲いてしまう。
「逃げるの?」
「逃げるでしょうよ。当たり前じゃないの」
「嫌?」
嫌じゃないから困るんです。
どちらかと言うと嬉しいです。
嬉しいけれど、嬉しくないと言うか、商店街の雰囲気が、と言うか……
からかって来られるのに対応するスキルが私にはない。
「付き合ってるんだから、これくらいは普通でしょ」
「つ、付き合ってない……」
「そういう事を言ってると、既成事実作るよ?」
どこまでも黒い発言の敬ちゃん。
「敬介。うちの娘で遊ぶなよ」
店から親父様が出てきて、敬ちゃんと目が合うと苦笑する。
「珍しい。井ノ原さんがいる」
「さすがにお前んとこの母親にドヤされたんだよ。でもまぁ、お互いにいい歳なんだから、騒ぐことでもないだろう?」
「そうだね。放っておいてもらった方が嬉しいけど」
「……さすがに、既成事実を見逃すのは親として問題だろうがな」
「実は放任のくせに」
「生意気な口は30年早いぞ、若僧」
爽やかに笑顔で話す二人に、少し……いや、ドン引きだよね。
「敬ちゃん、仕事遅れるよ」
「あ。行ってきます」
「いってらっしゃい」
言うと、何故かじっとして立ち止まる。
「急がないと、本当に遅れるよ?」
「あ、うん。じゃあ」
スッと、髪から葉っぱを取ってくれてニッコリ微笑んだ。
敬ちゃんのふんわり笑顔は昔から好きだな。
後ろ姿を見送って、それから店に戻るとレジの前の椅子に座る。
朝の商店街は、通りすぎていく人でいっぱい。
今日はポロンは定休日だし、喜美ちゃんもお休み。
ラッピングリボンはたくさんあるし、ぼんやりするには良い日和。
ブリザードフラワーのリベンジでもしようかと思ったら、親父様と目があった。
「おはよー」
「おはよう」
朝の挨拶はいつも通り。
敬ちゃんはニコニコしてる。
「今日も頭に葉っぱついてる」
「あ。うん。大丈夫」
すかさず逃げると、目を丸くされて微かに笑われた。
この、微かに笑う方が敬ちゃんの地なのかもしれない。
どこか爽やかで、どこか邪悪。
今日もスッキリスーツを着こなして、毎日朝の挨拶を交わして、毎朝人の頭にキスしてから出勤していく。
おかげで昼間のお客様には恵まれるようになったけど、噂話に花まで咲いてしまう。
「逃げるの?」
「逃げるでしょうよ。当たり前じゃないの」
「嫌?」
嫌じゃないから困るんです。
どちらかと言うと嬉しいです。
嬉しいけれど、嬉しくないと言うか、商店街の雰囲気が、と言うか……
からかって来られるのに対応するスキルが私にはない。
「付き合ってるんだから、これくらいは普通でしょ」
「つ、付き合ってない……」
「そういう事を言ってると、既成事実作るよ?」
どこまでも黒い発言の敬ちゃん。
「敬介。うちの娘で遊ぶなよ」
店から親父様が出てきて、敬ちゃんと目が合うと苦笑する。
「珍しい。井ノ原さんがいる」
「さすがにお前んとこの母親にドヤされたんだよ。でもまぁ、お互いにいい歳なんだから、騒ぐことでもないだろう?」
「そうだね。放っておいてもらった方が嬉しいけど」
「……さすがに、既成事実を見逃すのは親として問題だろうがな」
「実は放任のくせに」
「生意気な口は30年早いぞ、若僧」
爽やかに笑顔で話す二人に、少し……いや、ドン引きだよね。
「敬ちゃん、仕事遅れるよ」
「あ。行ってきます」
「いってらっしゃい」
言うと、何故かじっとして立ち止まる。
「急がないと、本当に遅れるよ?」
「あ、うん。じゃあ」
スッと、髪から葉っぱを取ってくれてニッコリ微笑んだ。
敬ちゃんのふんわり笑顔は昔から好きだな。
後ろ姿を見送って、それから店に戻るとレジの前の椅子に座る。
朝の商店街は、通りすぎていく人でいっぱい。
今日はポロンは定休日だし、喜美ちゃんもお休み。
ラッピングリボンはたくさんあるし、ぼんやりするには良い日和。
ブリザードフラワーのリベンジでもしようかと思ったら、親父様と目があった。