小路に咲いた小さな花
「よく恥ずかしげもなく、娘に言うよね」
「恥ずかしがる歳は過ぎたよ。それに本人はいないしな」
楽しそうに呟いて、私の手元を眺めた。
「ブーケか?」
「あ。ううん。敬ちゃんの友達さんの婚約祝いにいった時、渡したブリザードフラワーがイメージと違って」
「随分かっこいい感じに作るんだな」
「ん~。凛とした感じに作りたいんだけど。花がカラーってイメージなんだよね」
「アクセントにアンティークローズでも使えばいい。カラーだけだと面白味がなくなるぞ」
「ああ、でも、ブリザードにするから……」
「ブリザードにするなら、バラの色に少し青みを入れれば多少はクールになるだろう」
「親父様。けっこう色見気にするよね」
「……まぁな」
言っている間に、お客様がきて親父様が対応しにいった。
それをぼんやり眺めながらミニブーケの束をいくつか作る。
夕飯かぁ。
まずは敬ちゃんに連絡かな。
忘れる前に連絡しておこう。
スマホを取り出して、メールを打ち込んでいたら、酒屋さんの和弘君が店を覗いていた。
おいでおいでしてみたら、どことなくこそこそと入ってくる。
「彩菜さん。ちょっと相談していい?」
「ん? 何の相談?」
「実はさ、高校の卒業式の時に、担任に花送ろうって話になってさ」
卒業式?
「今、冬休みだよね?」
「冬休み終わったら、すぐ卒業式じゃん。クラスから金集めないとだし、いくらくらいが相場か聞きたいんだよね」
あ、なるほどなるほど。
「先生は女の人?」
「うん。えーと、38歳の英語教師」
「かわいい感じがいい? 華やかな感じがいい?」
和弘君は難しい顔をして、それから人差し指をくるくるする。
「クールで華やかな感じ」
クールで華やかな……か。
「クラスメートって何人?」
「え。男子と女子合わせて43人」
「それなら一人100円集めたら、結構豪華な花束作れるよ~」
「マジ? OK。サンキュ彩菜さん」
満面の笑みを見せながら帰っていく高校男子を見送って、もうそんな時期になるんだな、なんて考える。
花屋さんは一年中常春だからなぁ。
もう、曜日は覚えていても、日にちは忘れるって言うか。
お客様の応対をしていた親父様が戻ってきて、花束を作り始めた。
真面目に働いていたら、そこそこかっこいいのに。
「恥ずかしがる歳は過ぎたよ。それに本人はいないしな」
楽しそうに呟いて、私の手元を眺めた。
「ブーケか?」
「あ。ううん。敬ちゃんの友達さんの婚約祝いにいった時、渡したブリザードフラワーがイメージと違って」
「随分かっこいい感じに作るんだな」
「ん~。凛とした感じに作りたいんだけど。花がカラーってイメージなんだよね」
「アクセントにアンティークローズでも使えばいい。カラーだけだと面白味がなくなるぞ」
「ああ、でも、ブリザードにするから……」
「ブリザードにするなら、バラの色に少し青みを入れれば多少はクールになるだろう」
「親父様。けっこう色見気にするよね」
「……まぁな」
言っている間に、お客様がきて親父様が対応しにいった。
それをぼんやり眺めながらミニブーケの束をいくつか作る。
夕飯かぁ。
まずは敬ちゃんに連絡かな。
忘れる前に連絡しておこう。
スマホを取り出して、メールを打ち込んでいたら、酒屋さんの和弘君が店を覗いていた。
おいでおいでしてみたら、どことなくこそこそと入ってくる。
「彩菜さん。ちょっと相談していい?」
「ん? 何の相談?」
「実はさ、高校の卒業式の時に、担任に花送ろうって話になってさ」
卒業式?
「今、冬休みだよね?」
「冬休み終わったら、すぐ卒業式じゃん。クラスから金集めないとだし、いくらくらいが相場か聞きたいんだよね」
あ、なるほどなるほど。
「先生は女の人?」
「うん。えーと、38歳の英語教師」
「かわいい感じがいい? 華やかな感じがいい?」
和弘君は難しい顔をして、それから人差し指をくるくるする。
「クールで華やかな感じ」
クールで華やかな……か。
「クラスメートって何人?」
「え。男子と女子合わせて43人」
「それなら一人100円集めたら、結構豪華な花束作れるよ~」
「マジ? OK。サンキュ彩菜さん」
満面の笑みを見せながら帰っていく高校男子を見送って、もうそんな時期になるんだな、なんて考える。
花屋さんは一年中常春だからなぁ。
もう、曜日は覚えていても、日にちは忘れるって言うか。
お客様の応対をしていた親父様が戻ってきて、花束を作り始めた。
真面目に働いていたら、そこそこかっこいいのに。