小路に咲いた小さな花
でも、まぁ……不真面目なのが親父様かな。

こんなんでも、締めるところは締めてくれるみたいだし。

考えていたら、ポケットの中でスマホのバイブを感じて取り出す。

『今日の晩酌って何? 誘われてる? それとも報告? よく解らないんだけど』

あ。途中半端で送信しちゃったみたい。

『親父様が、晩酌につきあって欲しいみたい』

今度こそ打ち込んで送信。

『え。オレ井ノ原さんに小言を言われそう? 彩菜いるよね?』

小言……を言う親父様は想像つかないけど、私は確実にいるよね?

『いるよ。何食べたい?』

送ると、すぐに返ってくるメール。

『彩菜の作る煮魚食いたい』

煮魚ね。

今の旬は何かな。

後でまっさんとこに行こう。

思って顔を上げたら、呆れたような親父様と目があった。

「そんな面してメールするくらいなら、いっそ“付き合い始めました”で
いいじゃねぇか」

「どんな顔?」

「見たことないくらい、幸せそうな顔」

「そ、それは……」

それはそうだと思う……よ?

うん。だって、ねえ?

だって、好きな人だもん。

それはそうだよ。

「こ、今晩は、煮魚にするから!」

「なんでもいいよ。後は熱燗つけてくれるとありがたいな」

「親父様日本酒飲むの?」

「煮魚には日本酒の方が嬉しいね。敬介は呑める口だろうし」

そう言えば、親父様はお酒に弱いって敬ちゃんが言っていたなぁ。

皆呑む感じか。

それなら……

「お前はソフトドリンクにしておけ」

しっかり止められた。

「……お昼は何食べたい?」

「簡単なのでいいぞ」

「じゃ、カップ麺ね」

「それは……簡単すぎるだろう」

「解った。何あるか見てくるから、お店よろしく」

軽く苦笑されながら、自宅につながるドアを開けてリビングに向かう。

それから冷蔵庫に向かって、開けたらほとんどカラッポだった。

そうだな~。

うちではほとんど食べないから、材料を保存する習慣ないし。

買い出し行かないといけないかな。

「親父様。ちょっと買い出し行ってくる。お昼はうどんでもいい?」

「天ぷら乗るか?」

「揚げをのせてあげる」

そんなやり取りをしながらエプロンを外して、フリースを引っかけてからお財布を持った。

うどんは乾麺があるし、めんつゆはボトルのを薄めればいい。

後は……夕飯。

煮魚用の魚と、副菜に何か……

オクラの胡麻和え食べたいな。

あとは、ふろふき大根でもいいけど、大根余るんだよな~。

まぁ、余ったら近所に配ってもいいし、明日おでんにしちゃおうか。

後はぷらぷらしながら決めよう。
< 31 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop