小路に咲いた小さな花
そんな感じでも、すぐに平常運転になるのが敬ちゃんと言うか……

やたらに切り替えが早いから、たまについていけないんだけど。

「どーして彩菜は、俺との付き合い認めてくれないのさ」

いきなり食い下がってくる。

「……だって、何だか違う」

「違うって何が。彩菜は俺が好きなんだよね?」

うん。

それは否定しないけど。

「……何て言うか」

「俺も彩菜好きなんだし、付き合うのは自然じゃない?」

「だって、何て言うか……余り物だから拾われた的な印象が……」

言い募っていたら、お刺身パクつきながら、お酒をクイクイ飲んでいた親父様がニヤニヤ笑っている。

「敬介、お前……いつも女の方から言い出されてフラれてたろ」

ぎょっとした敬ちゃんが印象的だ。

「フラれる理由として、何を考えてるか解らない、か、人の話を聞いてくれないって言うのが多いだろう?」

「どうして井ノ原さんに解るのさ」

「やり取り見てたら解るよ。女心ってのは、見た目以上に複雑なもんだぞ、お前」

……親父様にニヤニヤと、敬ちゃんも言われたくないだろうな。

普段からちゃらんぽらんしてるくせに。

「まわりで騒ぐから、余計に意地にもなるしなぁ? 彩菜?」

ちらりと見られて、ご飯をかきこんだ。

そんなこと言われても困る。

もくもく鰈を食べながら無言でいたら、敬ちゃんが頷いた。

「彩菜は頑固?」

「違う。自分の意見があるだけ」

「それ、頑固って言うから」

「敬ちゃんだって、頑固だよ」

「うん。否定はしないよね。俺は頑固だし」

……あの。納得されても困るんだけど。

「まぁ、飲め敬介」

親父様がお酒を勧め、敬ちゃんが瞬きをする。

さっきから、ぐいぐい勧められてるよね。

「え。マイペースで飲む……」

「どうせお前も明日は休みだろ?」

「休みだけど、俺もそんなに酒強くないから」

「いいじゃないか。泊まっていけば」

「それはダメに決まってるでしょ」

お茶を入れ直しながら言うと、二人の視線が集中した。

「さすがに私、大人の敬ちゃん泊めないから」

「何も子供の頃みたいに、お前の部屋に泊めるなんて言ってないだろ」

「……意識の仕方が微かすぎる」

男性二人にブツブツ言われながら、そっぽを向いた。

なんとでも言ってください。
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