小路に咲いた小さな花
「デートしようよ。俺、彩菜とデートしたい」

「デートって、どこに……」

「どこがいいかな。今の時期だとドライブもまだ楽しくないし。どこに行きたい?」

「どこに……て、どこがいいかな?」

「今の時期だと限られるよね。春になれば色々あるけど」

「映画……って、言っても、見たいのないし。敬ちゃん寝るだろうし」

「……子供の頃と一緒にしないように。さすがにアニメーションじゃ寝ちゃうよ」

「うーん?」

なんだろう。

どこがいいだろう。

大の大人が遊園地……でもないだろうし。

えーと……

「あ。化粧品買いたい」

「え。買う気?」

「買う気。たぶん」

「考え直すなら今だよ?」

「意味が解らないから。買い物行こうよ」

敬ちゃんは肩を竦めて、諦めたような顔をした。

「まぁ、デートに乗ってくれただけでもいいか」

まぁ、そうなるけど。

「その後はご飯食べて帰ろう。井ノ原さんに言っておいてね?」

「うん。敬ちゃんと買い物に行くって言っておくー」

「デートに行くって言って」

「え。やだ」

「やだとか言わない」

そんな事をいいながらも、爆睡している親父様を部屋の布団に入れてくれた敬ちゃんは帰っていった。

空になった一升瓶。

……敬ちゃんはめちゃくちゃお酒が強い。
















 
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