小路に咲いた小さな花
「奏ちゃんは生真面目って方が似合ってるよね」

「生真面目?」

「なんでも杓子定規って言うか。悪くは無いけど、創造性がないじゃない」

「創造性……ねえ?」

「奏ちゃん。墓参りには必ず菊を選ぶタイプでしょ。そして彼女に贈る花は絶対に赤いバラ」

「……定番だな」

「セオリー過ぎて楽しくないじゃない」

「……どうしよう」

「何が」

「彩菜が恐い」

しくしく泣き真似されて苦笑を返す。

「恐くないよ。単なる感想だもの」

ひどいな~。

「でも、的を得ているだけに反論も出来ない」

いや、もっとひどいな、貴方は弟でしょうが。

だけど、今にして思えば、不思議な兄弟だった気がするな。

奏ちゃんはいつも本を読んでいたし、敬介はいつも誰かにいたずら仕掛けていたし。

私もどちらかと言うと、一緒になっていたずら仕掛けていた方だけど。

「兄貴はいつも褒められてた優等生だしな」

「まぁね。優等生なお兄ちゃんは自慢だよね」

小さい頃から、奏ちゃんはテストの点が良かっただの、生徒会の役員になっただのと、色々と聞いてたよね。

「……まぁ、自慢、だな」

「なにその微妙な反応」

「んー……いつも比べられてたからなぁ」

……そうかもね。

奏ちゃんは良い子で、敬介は悪がきで……なんて、よく聞いていたけど。

でも、あまり気にしたことなかったな。

敬介は、実は優しかったから、本当に人が困るようないたずらはしなかった記憶があるし。

「本当の兄弟だと微妙?」

「そうだな。少し微妙な感じかな。奏介に出来て、敬介はできないとか、うちの親は言わなかったけど、まわりがな……」

「比べたところでしょうがないじゃないの」

言いながらチョコタルトを頬張ると、微かな驚きを感じて顔を上げた。

「なに……」

「いや。彩菜って大人」

「男の人の精神年齢はマイナス10歳って言うしね」

「え。じゃ、俺は22歳なわけ? 勘弁して」

「皆が皆、そうじゃないでしょ。一般論よ、一般論」

「そうだろうけど、なんかヤダー」

「そんなところが32に見えないー」

「でも、彩菜って兄貴の事、好きだったでしょ?」

「はあ?」

何を唐突に……

思わず口をあんぐり開けて敬介を見た。
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