小路に咲いた小さな花
「小さな頃、兄貴と話すとき顔赤くしてたじゃん」
奏ちゃんと話していて顔を赤く?
そもそも、あまり話もしないんだけど……
「……してたかな」
まったく記憶にないけど。
「してたよ。しかも、バレンタインには兄貴にはチョコで、俺にはよく解らない石とか」
石……
それは、たぶん丸くて艶々した黒い石だろうな。
「後は何書いてるか解らない、名前の入ったスケッチブックとか」
スケッチブック。
ああ……うん。
たぶん、文字を書いた記憶があるな。
クレヨンで花を描いたような気もするし。
「……バカじゃない?」
「バカじゃない。兄貴にはちゃんとバレンタインデーあげてたじゃんか」
「そりゃそうよ」
チョコにでかでかと“義理”って書いたチョコをね。
「だいたい敬介は毎年たくさんチョコもらってたじゃない」
学生時代には紙袋2つとか、尋常じゃない量を貰っていたの知ってるんだから。
そんな人に、チョコあげたところで印象になんて残らないのも知ってる。
だから……
いや、私が何も言わないから……かも知れないけどね。
だからって、わざわざ言うものでもないと思う。
“それ”は、当時の私の宝物だった……
なんてこと、わざわざ言うことじゃないと思うのね。
何だか、実は好きだったんですアピールって、おかしいような気もするし。
……だから、私は素直じゃないんだろうけど。
でも、さ?
「そんなに欲しいなら、今年は奏ちゃんと同じものあげようか?」
「え。同じの?」
「奏ちゃんと一緒だと商店街の皆と同じになるけど、それがいいなら」
言うと、無言で敬介はコーヒーを飲み、それから遠くを見ながら指を折り始めた。
……何か計算が始まってる?
まぁ、こういう時の敬介は何を言っても上の空になるから、チョコタルト食べちゃお。
甘いけれど甘すぎずトロンと融けて、口の中でほろ苦く広がっていく。
……甘いだけじゃないのがいいよね。
甘くて、苦くて、とろけて、美味しい。
「ねぇ、彩菜」
あ。自分の世界から戻ってきたのかな?
「なに?」
「今朝からちょいちょい気になってたんだけどさ」
「うん?」
口の中のチョコがさっぱり消えちゃうな……なんて考えながらお茶を飲み、
「いつから俺の事を好きだったわけ?」
思いきりお茶を吹き出した。
奏ちゃんと話していて顔を赤く?
そもそも、あまり話もしないんだけど……
「……してたかな」
まったく記憶にないけど。
「してたよ。しかも、バレンタインには兄貴にはチョコで、俺にはよく解らない石とか」
石……
それは、たぶん丸くて艶々した黒い石だろうな。
「後は何書いてるか解らない、名前の入ったスケッチブックとか」
スケッチブック。
ああ……うん。
たぶん、文字を書いた記憶があるな。
クレヨンで花を描いたような気もするし。
「……バカじゃない?」
「バカじゃない。兄貴にはちゃんとバレンタインデーあげてたじゃんか」
「そりゃそうよ」
チョコにでかでかと“義理”って書いたチョコをね。
「だいたい敬介は毎年たくさんチョコもらってたじゃない」
学生時代には紙袋2つとか、尋常じゃない量を貰っていたの知ってるんだから。
そんな人に、チョコあげたところで印象になんて残らないのも知ってる。
だから……
いや、私が何も言わないから……かも知れないけどね。
だからって、わざわざ言うものでもないと思う。
“それ”は、当時の私の宝物だった……
なんてこと、わざわざ言うことじゃないと思うのね。
何だか、実は好きだったんですアピールって、おかしいような気もするし。
……だから、私は素直じゃないんだろうけど。
でも、さ?
「そんなに欲しいなら、今年は奏ちゃんと同じものあげようか?」
「え。同じの?」
「奏ちゃんと一緒だと商店街の皆と同じになるけど、それがいいなら」
言うと、無言で敬介はコーヒーを飲み、それから遠くを見ながら指を折り始めた。
……何か計算が始まってる?
まぁ、こういう時の敬介は何を言っても上の空になるから、チョコタルト食べちゃお。
甘いけれど甘すぎずトロンと融けて、口の中でほろ苦く広がっていく。
……甘いだけじゃないのがいいよね。
甘くて、苦くて、とろけて、美味しい。
「ねぇ、彩菜」
あ。自分の世界から戻ってきたのかな?
「なに?」
「今朝からちょいちょい気になってたんだけどさ」
「うん?」
口の中のチョコがさっぱり消えちゃうな……なんて考えながらお茶を飲み、
「いつから俺の事を好きだったわけ?」
思いきりお茶を吹き出した。