小路に咲いた小さな花
「………………」

驚いて瞬きしている敬介と、愕然とする私。

吹き出したと言っても、お茶だからアレだけど、確実にお茶まみれのテーブル。

「ご、ごめ。急に変な事を言い出すから」

慌ててバックからハンカチを取り出してテーブルを拭き、あわあわしながら咳払い。

あ、口元もお茶まみれ。

手でぬぐうのはどうかと思うし、ティッシュを取り出したら爆笑された。

「わ、笑うことないじゃない」

こんなお洒落な場所で吹き出すとか、女子としてあり得ないんだから!

「いやぁ。冷静になったなぁと思ってたけど、そうでもなさそうだね?」

「確認することじゃないし……!」

「ああ、うん。まぁ、そうだな」

ニコリと微笑み、敬介は両手を伸ばしてくる。

何を……と、思っていたら、頬を包まれ、指先で唇を拭われた。

「ちょ……っ」

そのままふにふに唇に触れられて……

「柔らかい」

慌てて身を引いて、ティッシュで口元を拭う。

「なにするの……!」

「いや。なんとなく」

「なんとなくじゃない!」

頬杖をしながら、クスクス笑ってるから睨み付ける。

「いや。だってさ、随分昔の事も覚えてたみたいだから……いつから好きだったのかなと思って」

いきなり話が戻った?

……だから、えーと。

「やだ」

「言わないの? じゃ、勝手に考えておこう」

それはそれでどうかな?

思いながら、タルトの残りを食べていたら、

「美味しい?」

「うん。食べてみる?」

「や。いいかな。甘いものが好きって訳じゃないし」

「そうだった? 結構一緒にケーキ食べてなかったかな」

「嫌いでもないよ。単に彩菜が幸せそうに食べるから、見たかっただけだし」

「そ、そう」

「俺の好みとして、ご飯を美味しそうに食べてくれる子が好みみたいだ」

「みたいって何。みたいって」

「最近気がついた。食べ終わった?」

「ん? うん。美味しかった」

「じゃ、次はどこいこうか。買い物続ける?」

うーん。それなりに買い物はしたからなぁ。

「何か見て回りたい」

「……何を?」

「何を……何って、何となく?」

「何となくじゃないから」

言われて同時にへらっと笑う。

「何だか変だね。思えば、まったく知らない場所に二人だけって初めてだし」

「商店街じゃ、二人で並んで座ってても、誰か話しかけて来てたしな」

「まぁね。商店街以外の時は、ママさんか親父様の引率つきだったし」

「そっか。彩菜は初デートになるんだな」

しみじみ言われて、無言になった。
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