小路に咲いた小さな花
それでも次の日はやって来るもので。

「随分と張り切ってるな。お前」

テレビを見ながら、呆れたような親父様に溜め息をつかれた。

具なしでおにぎりを2個。

梅干しと鮭のおにぎりは2個づつ。

だし巻き風卵焼きと、焼いたミニウィンナーと、唐揚げ。

隙間にブロッコリーをはさみこみ、プチトマト入れてみた。

たくあんはジップロック。

広口の水筒にはワカメの味噌汁。

たぶん完璧。

「このオレンジは入れないのか?」

「入らなかったから、丸ごと持っていくのー」

ポイポイとバックに詰め込んで、それから親父様を振り返る。

「行ってきます」

「はいはい」

玄関を開けると、目の前に敬介が立っていて、ぎょっとした顔をしていた。

「……っくりした」

「ご、ごめん。大丈夫だった?」

「何が?」

「ぶつからなかった?」

「ああ。大丈夫」

そう言って、私の格好を見てニッコリ微笑む。

「おはよう彩菜」

「おはよう」

いつも通り、頭にキス。

「…………」

「何か不満そうだな?」

「ううん。別に」

ドアを閉めてバックを持ち直すと、目を丸くされる。

「随分と大荷物」

「お弁当」

「持つから、貸して?」

そう言って手を出してくるけど……

敬介の肩にも大き目のバック。

たぶん、カメラ器材在中。

カメラの器材って、解らないけど……

「大丈夫。そんなに重くないから」

「……そう? そうはみえないけど」

軽くはないけどね。

だけどきっと敬介よりは軽いと思うんだ。

「今日はどこに行くの?」

「公園。少し遠いけど、兄貴に車借りた」

「あ。そうなんだ」

「駐車場まで歩こうか」

「ドライブだね」

ドライブなんて久しぶり。

親父様車ないし、それこそ子供の頃以来じゃないかなぁ?

確か敬介が免許取り立ての頃に、商店街の外側一周した以来だよね。

商店街の皆がほぼ使用しているであろう駐車場まで手を繋ぎ、ニコニコしていたら敬介と目があった。

「嬉しそうで良かった」

「……なんで?」

瞬きを返すと、敬介は困った顔で頭をかいた。

「この歳になって、公園デートはないとか言われまくった」

「え~。私はゆっくりするの好きだよ」

そもそも私は出不精で、行動範囲もかなり狭い人ですから、実は街中とかよりも近所の川原で日向ぼっこがいい。

「そっか。なら今度は温泉に行こう」

「え。温泉……!?」

言った瞬間に手を離され、車に荷物を積み始める。

「…………」

「もちろん泊まりな?」

そ、そそそうなるよね?
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