小路に咲いた小さな花
近所のカフェとか、定食屋とか、ラーメン屋さんなら、ちょくちょく誘われているけど。

……敬ちゃんて、実は食い道楽だよね。

「そう言えば……」

呟くと、敬ちゃんが不思議そうに私を見下ろして視線が合った。

「今日の午前中、お店に来たって聞いたんだけど。どうしたの?」

「ああ。えっと……営業に同行して、近くまで来たから。ちょっと彩菜がいるかなって覗いただけ」

「ふぅん」

敬ちゃんのお仕事してる姿が思い浮かばないけど、ちゃんと出来てるのかな。

営業の人とお仕事中に、商店街で何をしてたかは疑問だけど。

「お仕事楽しい?」

「そーだねー。楽しいの半分、大変なの半分……かな。でも、好きなことだしね」

そうだなぁ。私も花に囲まれているのは好きだけど、楽しい事ばかりじゃないものね。

……たまにお葬式の花を頼まれたりすると、知らない人でも悲しい気分になる。

「敬ちゃんは長生きしてね」

「ええ? 何、突然。俺って早死にしそう?」

びっくりされて思わず笑った。

「早死にしそうになくても。長生きしてよー」

「う、うん。解った」

「食生活が問題だよね。敬ちゃんてなんでいつも家でご飯食べないの?」

気がつけば、いつも定食屋さんにいるよね。

「あー……うん。いつもだいたい仕事で遅いから、用意されてない事が多いんだよね。それ以外にも、飲み会行ったりしてるし」

ああ。そうなんだ。

そうだなぁ、古本屋のママさんは、とても合理的だから。

コンビニの明るい光に目を細め、それからまた無言で自動ドアを通り抜ける。

まぁ、親父様がいなかったら、私も自分のうちでご飯作らないしな。

ご飯一人分って作るのは、さすがに少し不経済だし。

二人分も、なかなか不経済ではあるけど、作りすぎちゃったらお裾分けできるし。

「そう言えば、この間の煮物美味しかった」

「え?」

「この間、うちに煮物届けてくれたでしょ?」

ああ。そんなこともあったかな。

ママさんが、ジャガイモをお裾分けしてくれたから、お返しに煮付けた煮物をお裾分けした記憶がある。

「いいお嫁さんになるね」

……たまに、この笑顔にイラッとする私はひねくれているのかな。

「えー。そうかな」

「うん。早くいい人が現れるといいね」

やっぱりイラッとする私は、正直者なのかもしれない。
















< 7 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop