小路に咲いた小さな花
2
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髪型はオーケー。喜美ちゃんが気合いを入れて、何だか巻いてくれた。
服装はVネックの黒のセーターに、宅飲みだからと花柄パンツ。
コートは喜美ちゃんに文句を言われながらもいつものピーコート。
だって、別にデートじゃないもの。
デートなら、私でもそれなりに気を使ったかもしれないけれど、これはデートじゃないもん。
敬ちゃんの友達のお祝いに、ただ話し相手として呼ばれただけだもん。
待ち合わせは、友達の家に近い最寄り駅に19時集合。
集合……?
思えば、集合ってどういうことなんだろう。
ここで待ち合わせして、友達の家に集合……って、そういう意味だよね。
そう思いながら、ポケットからスマホを出して時間を確認すると、手の中で花のワルツが鳴り出した。
「あ。わ……っ」
「ああ。やっぱり彩菜だ」
「きゃあああ!」
真後ろからかけられた声に、思わず悲鳴をあげて飛び退いた。
振り返るとびっくりした顔の敬ちゃんと、その後ろにその他大勢。
「び、びっくりさせないでよ。敬ちゃん」
「あ。うん。ごめんね。でも誰だか解らなかったから」
「だからって人の真後ろに立つのは危ない人物だからね!」
「あー。そうか、そうかもね」
びっくりした~。
体勢を立て直すと、敬ちゃんの後ろから顔を出したのは、喜美ちゃんなら間違いなく大絶賛のイケメン顔。
「おー……。なんか見たことあんな」
「あるかも知れませんね。山本の家には大学時代何度か行きましたから」
「ああ。そうかもね。大学時代だから……たぶん、彩菜が中学生になるかならないかくらいかな」
イケメンさんたちが顔を見合せ、それから同時に敬ちゃんの肩を叩いた。
「え……なに? それ」
と、言うか、なにこれ。
何だか山が三つ、目の前に立ちはだかっている気分に……
「そこの三人。大の男がそんな小さな女の子見下ろしているのは良くないわ。ただてさえ無駄に大きいのに怯えてるじゃないの」
綺麗な女の人が三人を、冷たく、それはそれは冷たい視線で見つめている。
……例えるなら薔薇、だな。
しかも淡い色合いの薔薇じゃなくて、黒真珠。
赤くて深みのある黒薔薇。
綺麗だけれどトゲガあって、華やかだけれど深みがある。
「ええと、井ノ原さん? そんな男どもに構わず、こちらに来なさい」
えーと……でも、
「ああ。あの人が水瀬さん。そして隣が伊原さん」
敬ちゃんがニコニコ紹介してくれて、黒薔薇さんの近くに、凛として立つ女の人を見た。
伊原さん……は、
「しまった。カラーだった」
凛として真っ直ぐで、清潔感のある美しく白い花。
「はい?」
とても不思議そうに首をかしげられたから、紙袋の中からプラスチックケースに入れたブリザードフラワーを取り出す。
「かわいいお嫁さんイメージで作っちゃいました。伊原さんは可愛いじゃなくて、凛としたイメージだったんですね~」
「え……あ。私に?」
「どれ。見せて」
横からひょいとケースを奪われて、まじまじと中の花を眺めている。
ピンクの薔薇と、百合をあしらったミニブーケ。
「ああ。確かに可愛い感じか。まぁ……たまには可愛いんだからいいんじゃねぇの?」
と、言うか、このイケメンどっち?
「あ。そっちが磯村」
敬ちゃんの紹介に、磯村さんがにっこりと微笑む。
「婚約祝い?」
「あ。はい」
「どうも。そっか、あんた花屋の長女か」
「え? あ、はい」
と、言うことは、もう一人の眼鏡男子が葛西さんか。
納得したところで目があって、ペコリと頭を下げあった。
髪型はオーケー。喜美ちゃんが気合いを入れて、何だか巻いてくれた。
服装はVネックの黒のセーターに、宅飲みだからと花柄パンツ。
コートは喜美ちゃんに文句を言われながらもいつものピーコート。
だって、別にデートじゃないもの。
デートなら、私でもそれなりに気を使ったかもしれないけれど、これはデートじゃないもん。
敬ちゃんの友達のお祝いに、ただ話し相手として呼ばれただけだもん。
待ち合わせは、友達の家に近い最寄り駅に19時集合。
集合……?
思えば、集合ってどういうことなんだろう。
ここで待ち合わせして、友達の家に集合……って、そういう意味だよね。
そう思いながら、ポケットからスマホを出して時間を確認すると、手の中で花のワルツが鳴り出した。
「あ。わ……っ」
「ああ。やっぱり彩菜だ」
「きゃあああ!」
真後ろからかけられた声に、思わず悲鳴をあげて飛び退いた。
振り返るとびっくりした顔の敬ちゃんと、その後ろにその他大勢。
「び、びっくりさせないでよ。敬ちゃん」
「あ。うん。ごめんね。でも誰だか解らなかったから」
「だからって人の真後ろに立つのは危ない人物だからね!」
「あー。そうか、そうかもね」
びっくりした~。
体勢を立て直すと、敬ちゃんの後ろから顔を出したのは、喜美ちゃんなら間違いなく大絶賛のイケメン顔。
「おー……。なんか見たことあんな」
「あるかも知れませんね。山本の家には大学時代何度か行きましたから」
「ああ。そうかもね。大学時代だから……たぶん、彩菜が中学生になるかならないかくらいかな」
イケメンさんたちが顔を見合せ、それから同時に敬ちゃんの肩を叩いた。
「え……なに? それ」
と、言うか、なにこれ。
何だか山が三つ、目の前に立ちはだかっている気分に……
「そこの三人。大の男がそんな小さな女の子見下ろしているのは良くないわ。ただてさえ無駄に大きいのに怯えてるじゃないの」
綺麗な女の人が三人を、冷たく、それはそれは冷たい視線で見つめている。
……例えるなら薔薇、だな。
しかも淡い色合いの薔薇じゃなくて、黒真珠。
赤くて深みのある黒薔薇。
綺麗だけれどトゲガあって、華やかだけれど深みがある。
「ええと、井ノ原さん? そんな男どもに構わず、こちらに来なさい」
えーと……でも、
「ああ。あの人が水瀬さん。そして隣が伊原さん」
敬ちゃんがニコニコ紹介してくれて、黒薔薇さんの近くに、凛として立つ女の人を見た。
伊原さん……は、
「しまった。カラーだった」
凛として真っ直ぐで、清潔感のある美しく白い花。
「はい?」
とても不思議そうに首をかしげられたから、紙袋の中からプラスチックケースに入れたブリザードフラワーを取り出す。
「かわいいお嫁さんイメージで作っちゃいました。伊原さんは可愛いじゃなくて、凛としたイメージだったんですね~」
「え……あ。私に?」
「どれ。見せて」
横からひょいとケースを奪われて、まじまじと中の花を眺めている。
ピンクの薔薇と、百合をあしらったミニブーケ。
「ああ。確かに可愛い感じか。まぁ……たまには可愛いんだからいいんじゃねぇの?」
と、言うか、このイケメンどっち?
「あ。そっちが磯村」
敬ちゃんの紹介に、磯村さんがにっこりと微笑む。
「婚約祝い?」
「あ。はい」
「どうも。そっか、あんた花屋の長女か」
「え? あ、はい」
と、言うことは、もう一人の眼鏡男子が葛西さんか。
納得したところで目があって、ペコリと頭を下げあった。