【短】桜、ひらひら。 − sweet −
「…蓮なんて、大嫌いっ……!!」
佳奈はそれだけ告げると、走り出してしまう。
「おいっ…!佳奈……!!」
呼び止めようと手を伸ばしたけど、佳奈には届かなかった。
俺は叩かれた自分の頬に触れて、遠ざかる佳奈の背中を見つめる。
廊下の窓から外を眺めていると、更に雨が激しくなっていることに気づく。
佳奈……
傘忘れたって言ってたっけ。
そんなことをぼんやりと考えていた時。
「…蓮君、傘ないの?」
背後から俺を呼ぶ声が聞こえて振り返ると、クラスメートの麻衣子(まいこ)が立っていた。
「おぉ、麻衣子。
朝は天気良かったしなー…。」
目線を麻衣子から窓に移して、俺は雨を見ながらため息をつく。
…正直、
今は麻衣子と話す気にはなれなかった。
「じゃあ、これ貸してあげる。」
麻衣子はそんな俺を見かねたのか、持っていた折りたたみ傘を差し出してくれる。