♀乙女座と吸血奇術師♂② ～ｳﾞｧﾙｺﾞﾄﾏｼﾞｶﾙｳﾞｧﾝﾊﾟｲｱ②～

校舎の建物の陰から見える、学校の庭に横並びに設置されている、三基のベンチ。

その真ん中のベンチには、ポニーに髪を結んだある一人の少女が座っていて、何やら雑誌らしき物を読んでいた。

「一体、何の雑誌読んでいるんだろう。

凄く幸せそうな表情して…

…いつも読んでるファッション雑誌かしら？」

「いや、違う。

最近、安華江は、あの手の雑誌をよく読んでいる。

遠山恵美子から、遠隔攻撃を受け続けて、神経をすり減らしている今の彼女にとって、ファッションや占いの雑誌なんかよりも、はるかに心癒される物であり、心の支え…

今回のお前の役割は、今の彼女の、その心の支えを守る事につながっていく。」

「心の…支え？」

「彼女は今、クリスマス・イヴに向けて、秋野修二に送る予定のプレゼントを企画している最中なんだ。

…少し、いや、ずいぶん変わったプレゼントだけれどな。」

「変わったプレゼントって…」

二人はしばらく、安華江を見守りつつ会話をしていた。

そして安華江が雑誌を読み終え、その場所から立ち去る際に、彼女が抱えている雑誌の間から、何やら一枚の紙切れがひらりと地面に舞い落ちた。