♀乙女座と吸血奇術師♂② ~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア②~
「おーい、どうしたんだよ中川?」

「何固まってるのよ。

早く、結果を見せてよ。」

「な…無い!?

無い!無い無い無い!

ハートのAが無い!?

どうして!?」

「えっ!?」

「ハ、ハルちゃん!」

その中川猛の発した言葉に驚く観客、そして礼士。

観客の目の前で、ひどく狼狽した姿をさらす中川猛。

そして中川猛は、ボックスを逆さまにして、カードを全てまるテーブルの上にばらまこうとしたので、それを春子が止めに入った。

「ちょ、ちょっと!
テーブルが砂で汚れるでしょ!?

教室の掃除だって、終業式が終わってさっきやったばかり…」

「そ、そ、掃除ぐらい、私がやります、はい、私が後でいくらでも!

テーブルだって、きれ~いにして、あなた方の奇術同好会にお持ちします!

え、えいっ!」

中川猛は、かけ声と共に、ガサガサガサーッ!と、勢い良くまるテーブルの上に、ボックスを逆さまにして中身をぶちまけた。

もくもくと砂ぼこりが立ちこめ、正にプロのマジックショー顔負けの演出と共にボックスの中から現れたカード。

それは、ハートのJ、Q、Kの三枚のカード。

しかしなぜか、ハートのAのカードだけ、きれいさっぱり、見事に消え失せていた。

真っ青な顔の、中川猛。いつの間にか、そのまるテーブルの周りには、観客の人垣が出来上がっていた。
< 35 / 71 >

この作品をシェア

pagetop