♀乙女座と吸血奇術師♂② ~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア②~
ちなみに、去年の大晦日は、記念すべき俺様が、礼士の心の中から目覚めた日でもあった。

礼士は大晦日の晩、クラスメートの明智と初詣に行っていたんだが、その時だ。

…その、悪魔の女に出会ったのは。

礼士の奴が賽銭投げ入れて拝んでる時、その女も、礼士の横で拝んでたんだが、その時につぶやいていた、悪魔の言葉に触れて、俺様が初めて礼士の心から目覚めたのさ。

ある意味、コイツは俺の生みの親でもある…」

春子は、両腕を組みながら、じっとヴァンパイア礼士の話を聞いていた。

トマトジュースをちびりと一口飲んで喉を潤すと、再びヴァンパイア礼士は語り出した。

「…その女は、こう言った。

『…あの女に、復讐がしたい!

色々と復讐の方法を考えたけれど、クリスマス・イヴの日に、アイツが彼氏からふられるように出来るのなら、それが一番良いわね。

でも、今は無理ね。

…今のあの女から、男を引き離す事は。

何故なら…


…神様、どうか良い知恵を…』




…生まれたての俺様の右手には、礼士の野郎がコートに入れっぱなしになっていたボールペン、左手には拝む前に礼士が引いちまった、大凶の文字の書かれたおみくじの紙が握られていた。

そして俺様は、神頼みしか出来ない、哀れな復讐者に、おみくじの文字の書かれていない空いたスペースに、復讐の為のヒントを書いて、こっそりその女のジャンパーのポケットに入れてやったんだ。
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