不幸ネット
「おはようございます」

 なるべく明るい声で、努めて私は笑顔を作った。

 朝からくだらない事を考えていたら、あっという間に会社に到着していた。

 私の挨拶に、すでに出社していた数人が返事だけをこちらに向ける。

 カタカタと、キーボードを打つ音が小気味の良いリズムを奏でていた。

 おそらく朝一の商談があるのだろう。

 時計に目をやると、始業時間まではまだ三十分ほどある。一通り社内を見渡して上沼がいない事を確認すると、ほっと息をついた。

 彼女よりも遅い社内なんて、考えただけでもぞっとする。

 私は自分のデスクの下に鞄を置いてパソコンを起動させた。
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