不幸ネット
「おはようございまーす」

 十分ほどして、元気な声が入り口から聞こえてきた。

 彼女は「暑い暑い」と言って手で顔を仰ぎながら私の隣のデスクへと腰を下ろす。

 美樹だ。

「良美さん、おはよ! 今日も早いね」

 美樹が屈託のない笑顔をこちらに向ける。

「そりゃそうでしょ。例え一秒でも遅かったらまた何言われるか分かったもんじゃないんだから……」

「おはよ」

 最後の方はほとんど声になっていなかったと思う。

「おはようございます」
「おはようございます!」

 上沼に向けられた言葉が美樹と綺麗にシンクロする。

 上沼は美樹にだけ笑顔を返し、私達の目の前のデスクに腰を下ろした。
< 15 / 228 >

この作品をシェア

pagetop