不幸ネット
 私はきょろきょろと室内を見渡した。

 特に不審な点は見当たらない。

「どうしたの、急に? 突然だったからびっくりするじゃん」

 美樹は怪訝そうに私を見つめた。

「いやだって……確かに聞こえてたのに」

 私は何が何だか分からずに美樹の顔を見つめ返した。

「ほんとに何にも聞こえなかったよ? 良美さん、ちょっと飲み過ぎた?」

 気のせい?

 そんなはずがない。

「本当に何も聞こえなかった? 何かこう、"ポーン"って高い音で……」

「きっと飲み過ぎと疲れのせいだよ。現に私には何も聞こえなかったし」

 取り乱す私を落ち着かせるように、美樹は私の背中を優しくさすった。

「本当なの。お願い、信じて」

 困惑する美樹に、私はなおも訴えかける。

 その時私は気付いてしまった。
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