不幸ネット
 私、容疑者なの……?

 それ以外に思い浮かばなかった。

 刑事ドラマなんかではよく目にする光景。

 それは、事件の容疑者に対して行われているものだった。

 私、知らない。

 何もやっていない。

 私は顔が熱くなった。

「ちょっと、一体何なんですか!? 私、怪しい事なんて何もやってません。それにいきなり来て、勝手に人のプライベートを覗いて……こんな事やっていいんですか?」

 私は毅然と言い放った。

 すると、手前にいた綾目が振り返り、やれやれといった様子で腰に手を当てた。

「あのね。こっちはちゃんと令状取ってるの。何もやましい事がないのならそんなに取り乱さなくてもいいでしょ? それに、あなたが怪しいかどうかは、捜索が終わったら分かる事だから。言ってる事、分かる?」

 綾目はそれだけ言うと、もう何も突っ込んでくるなとばかりに背を向けた。

 あまりに冷たい物言いに私は何か言い返しそうになったけど、これ以上騒いで相手の心証を悪くするのも良くないと、渋々口をつぐんだ。
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