不幸ネット
「やっば……」

 翌日。

 私は目を覚まして、頭のてっぺんから血の気が引いていた。

 時刻は八時半過ぎ。

 うちの会社の始業時間は九時。

 そして私の家から会社までは、タクシーを使ったとしてもニ十分以上はかかる。

 携帯のディスプレイを前に、私は改めて青ざめた。

 昨日お風呂にも入らずに寝てしまったせいで、体は少しべとついている。

 シャワーを浴びる時間はない、か。

 私はとにかく服を着替えて家を飛び出す。

 落としていなかったボロボロの化粧だとか、寝癖のついた髪だとか。そんな事を気にかけている場合ではなかった。

 通りで捕まえたタクシーに飛び乗る。

 行き先を手短に伝えると、私は鞄の中の化粧ポーチに手を伸ばした。
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