モバイバル・コード
 オレと加藤さんが、野球とサッカーのどちらが面白いのか討論をしていたのは10分くらいだろうか。


「ついたぞ」


「え? もうですか?」


 トラックが突如止まった。通り過ぎるとばかり思っていたのに。


「秋葉……原…ですよね? 北千住じゃないです。どうしたんですか?」


 ここは会社がある北千住ではない。


 加藤さんは、秋葉原の中央通りの路肩へトラックをつけた。


 眩しいネオンとタバコの煙が、携帯電話を見つめる加藤さんの目を細めさせる。


「よし、検索完了。携帯の地図ではここら辺だって書いてあるけどな。龍一君、ちょっと待ってて。はいこれ」


 きっちり120円を渡され、オレは加藤さんの顔を怪訝(けげん)な表情で覗き込んだだろう。


 遅くなるからコーヒーでも飲んでおいてとオレに告げてトラックを降りていった。


 秋葉原か……。


 家にある家電製品が『テレビと冷蔵庫と洗濯機』


 旧世代の『3種の神器』しか持っていないオレには無縁の街だ。
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