モバイバル・コード
「紅茶にしますか? コーヒーにしますか?」


「お気遣いありがとうございます。ですが、ゆっくりしている時間は無いんです。どうしても調べてもらいたいことがあって、急いでいるんです。警察の方にしか出来ないことなんです」


「それはそれは、話は少し伺っていましたが人が死んでいるとか。それでしたら、尚更ですよ。

あなた方には『リラックス』して頂く必要があります。興奮した状態では聞き込みは出来ませんからね」


 署長は慣れた手つきでインスタントコーヒーを作る。


「これはね、ブラジルの最高級の豆なんですよ。風味が違います。コーヒーはお好きですか?」


「オレは好きです」


「僕も飲みます」


「あたしは……ちょっと苦手です」


「ではお嬢様にはこちらのセイロンティーを召し上がって頂きましょう」


 署長は慣れた手つきでポットの前にカップを置いた。


 自然と砂糖を入れようとするのを見て、オレは止めた。


「あ、すいません、オレはブラックが良いんです」


「あの、僕もブラックで。甘いのは眠くなりそうで……あんまり寝てないんです」


 お湯をいれた署長は、ゆっくりとオレ達3人に微笑を届けた。


「私は本物にこだわるんですよ。砂糖もインドから取り寄せた極上の逸品です。大丈夫、そこまで甘くないですからこれで試してください」


 本物のコーヒーって、砂糖を入れるものなのか。


 てっきりブラックで味わう物だと思っていた。
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