モバイバル・コード
──『カチャリ』


 テーブルに4人のカップが並んだ。


 オレは署長が淹れてくれたコーヒーに口づけた。


 確かに美味しいが、少し苦い気もする。


「本場は砂糖を入れても、こんなに苦いんですか?」
 

 雷也も同じ事を考えていたらしい。


「ええ、今日もいい味ですね。『仕事』がはかどります」


 署長も一口コーヒーを飲んだ。


「あたしの紅茶も少し苦い気がする……砂糖入れてますか?」


 愛梨が舌を出して目を細めた。


「もちろん、先ほど説明した通りです。本場スリランカのセイロンティーは苦味がするんですよ。

日本だけですよ、『偽者の紅茶』を『紅茶』だと信じて飲んでいるのは。いえね、皆さんをバカにしているわけではありませんよ」


 少しひねくれた性格の雷也を真っ直ぐにして、大人にさせた感じ……かな。


 オレ達はお茶会をしに来たわけじゃない。
< 128 / 835 >

この作品をシェア

pagetop