モバイバル・コード
──『リリリリリリリ』


 内線なのだろう。所長室に電話のコール音が響き渡る。


 真田署長がソファから立ちあがり、L字デスクへ向かう。


「……はい、はい。ええ、やはり……ええ、分かりました。いますよ。では20分後にこちらへ来てください」


 どうなんだ、どうなったんだ?


 風邪を引いたかもしれない。少し頭が痛い。


 受話器を置き、デスクの後ろの景色を見ながら、ゆっくりとした口調で答えた。


 あの日の応接間の慶兄と似ている……その行動に少し懐かしさを覚えた。


「残念なお知らせです。『出張』というのは本当です。今、特別情報省の政務官の方から連絡が来ました」


「そんな……それじゃあ動画は……? オレ達、見たんです。『モバイバル』ってサイトも今接続しています」

 
 雷也がさっきから携帯で調べているのは見えていた。


「ええ、そのサイトの事は調べています。私達、警察も国の役人ですからね」


「急にこのサイトにアクセスをしたら、オレ達が『モバイバル本戦』へ出場するとかなんとか…。

すいません、とにかく動画が流れてきたんです。動画の最後に、『モバイバル』の本戦のことは他言するなとか色々書いてあって……」


 言葉が上手く出ないが、オレは必死に説明をした。


 突然、部屋の空気が変わった気がした。


「それは大変だ!!」
< 130 / 835 >

この作品をシェア

pagetop