モバイバル・コード
 真田署長は急に狼狽(ろうばい)しはじめ、その迫力に気圧された。


「なぜ他言したのですか、なぜ!!」


 室内に署長の大声が響き渡った。どうしたんだ……。


「決まってますよ、人が死んだからです。霧島慶二は僕の兄なんです!!」


 雷也が力強く答えた。俺は、すぐに声色がおかしい事に気づいた。


 顔色が酷く悪い。疲れ過ぎてるのか、疲労がピークに達しているのか……。


 真田署長がまた大声を発した。


「人が死んだとはいえ、政府のサイトで他言禁止という掟を破ったのは、まずい事ではありませんか!!」


 え……?


 署長は何を言ってるんだ?


 発言の意図が全く分からない。


 何を、何を言ってるんだこの人は。


 『掟』を話す事よりも『殺人』の方が事件だろう。


「あの、出張ってなんですか……? あたし達、確かにみたんで……す」


──『ドサッ』


 愛梨がソファから床に崩れ落ちた。


 愛梨の額にも脂汗が浮かんでいる、昨日から寝ずに無理するから……。


「大丈夫か、愛梨……」


──『ドサッ』


 2回目の音に、オレは恐怖を感じ、そして悟った。


 オレ達が甘かった。
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