モバイバル・コード
 ちょっと待ってくれ。


「いやいやいやいや、受け取れないっすよ! 自分はこんな高価な物、いいですいいです!!」


 当たり前だ、高すぎる。プレゼントで貰う物じゃない。


「なに言ってんの、中古だからもう返品できないよ。少しだけ型落ちの携帯だけど受け取ってや。おじさんからイマドキじゃない若者、龍一君へのプレゼントだ」



 加藤さんの満面の笑みを見て、なんともいえない嬉しさがこみあげてくる。



「ダメですよ!ダメダメ、型落ちだろうが中古だろうが1万2万で買えるもんじゃないですよね?……じゃあ自分は今日の日当要らないです!」


 仏の加藤さんが続けた。


「そう遠慮するなって。おじさんな、この前競馬で10万買ったから。な、おじさん独身だし子供居ないし。何より金なんてまた持ってたら馬で使っちまうんだから、未来ある若者の為に一肌脱ぐのもカッコイイだろ?」

 
 加藤さんは少し恥ずかしそうに鼻をかいた。


「そうは言っても、どうしてオレにそこまで……」


「寂しそうだったから。昼間休憩の時に話したろ。携帯の話。龍一君って顔に考えてる事が出る方だろ?おじさんには分かるよ。」


 年上ってそういうものなのか……確かに慶兄も大人だったな。


 必要だと思う物は、オレにたくさん譲ってくれた。


「家庭の事情でバイトしてるって言ってたけど、欲しい物も買えてないんだろ? いいからいいから」
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