モバイバル・コード
 いつもの光景、いつもの曲がり角。

 
 そこにはコンビニがあった。そして、オレは速度を落とした。朝のパンを買う為に。


 この時間では見た事の無い女の子が、携帯電話を手に店の前に立っていた。
 

 特に意識をする必要もないのだが、なぜか気になった。その服装……『ロリータファッション』と呼ぶのだろうか。


 彼女は、小さな顔を上げてオレを見た。

 
 その瞳はとても大きく、フランス人形のような気高さがある。


 流石に……会話をするのもおかしい。


 ただ、その横顔が凄く寂しそうで、思わず声が飛び出た。


「……ここら辺の……人かな? 毎日このコンビニに来てるけど、見ないけど……」


「ん…うう……」


 首を横に振るだけで、少女は悶えるばかり。極度の恥ずかしがり屋さんか。


「ごめんね、じゃあ」


 急がないと……今日はあの二人に携帯電話を見せつけてやらないとな。
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