モバイバル・コード
「ねぇねぇ、雷也君のお兄さん、今日テレビに出るんだよね!?メディアに登場するのは初めてだって聞いたけど、ストリーム放送で携帯でも観られるんでしょ!」


 毛先が痛んだ茶髪のこの子は……山下だっけ。


「ちょーすごいよね、今大人気のジャコパの社長だか会長でしょ?もう全部のSNS管理してる人ってことだよね?!あたしもサイトのモデルとかに使ってくれないかな?!雷也くんお兄さん紹介してよ、雷也君の彼女として!」


 毛先が痛んだ茶髪のこの子は……杉山だっけ?


 コピー機から出てきたような女子二人が雷也を囲む。


 何を言っているのか、もちろんオレには分からない。

 
 テレビに出ると『兄貴』の部分以外はね。


「兄貴は家にも帰ってこないし、知らないよ」


 雷也は後ろ髪をかきながらぶっきらぼうに答えて、彼女達を追い払った。


 雷也の兄貴……『霧島慶二』


 オレが世界一尊敬している8個上の男だ。

 
 高校卒業後、東京大学に進学し在学中に携帯電話のゲームを開発したとかなんとか。


 秋葉原のあの一等地タワーも兄貴が働いているビルのはずだ。


 ビルの話を聞いたのは数ヶ月前だったかな。


 その日は雷也と二人で、サッカーの授業をサボって屋上で寝ていた。



「……25歳にして会長の座に就いた。兄貴は僕より100倍頭がいい。大して努力も何もしてないくせに」



 あまり兄貴の話をしたがらない雷也が、珍しく話をしたから覚えている。
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