モバイバル・コード
『今日の都内全域の一斉ゲリラライブ、政府公認なので思いっきり騒げまーす!!でもマナーはよくしてねー!!』


 騒がなくていいよ、こっちは30分以内にね、死にそうなんだよ。


 良く見れば一般車両は封鎖され始めている。なるほど、本当に都内全域で始まるわけか。



「うぉおおおおおおお!! L・O・V・E・ラブリーももな!!!」


「愛してるー! えりか愛してるーー!!」


「ファイヤー!! サイバー! ダイバー……」



 凄い人が集まってきた、まだ3分も経ってないぞ!?


 こんな事に時間を使ってる場合じゃない。なんとか方法を考えないと。



──『カシャ』


──『パシャ』


 カメラのフラッシュが強く、昼間なのにCCB96のメンバーのラメ入り衣装がキラキラと光り輝いていた。


 オレは本当に時間が無いんだ、なんとか東口へ戻らなければ。


「どいてくれ、どいて!! どけっ!!」


 うじゃうじゃと駅から湧いてくる人の群れ、群れ、群れ。


 仕方ない、良心が痛むがライブで死人が出て興ざめするよりよほど良いだろ。


 『強硬手段』で地下道まで向かうか。



「ケガ人が通りまーす、ケガ人でーす、道を開けて開けて!!」



 人間の本能に呼びかける魔法の言葉はユダヤ教のモーゼのようだ。人垣が割れていく。


 なんとか通れそうだ、すぐに東口へ向かお……?


 なぜか違和感を感じて、オレはふと周囲を見上げた。




──屋上に人影



──ビルの窓からも人の顔と手



──みんな『携帯電話のカメラ』で彼女達を撮影していた
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