モバイバル・コード
 さっきから魔法の力をたくさん使っている気がするが、これで死んだら金なんてあの世に持っていけないよな。


 20万くらいを帯からぶち抜いてばら撒く。


「おい、金だ!!」


「どけ、俺が拾う!」


 怒号と共に人が消え、エレベーターの船頭はオレだけになった。


 多分、止まっても2回や3回くらいだ。後は……運に身を任せるしかない。


 残りが『10分30秒』


 いよいよもって、切羽(せっぱ)詰ってきたな。



──『ポンッ』



 来た、一発で最上階だ。さっきの要領だとこのビルは、最上階から別に階段で屋上に上がれる。
 

 神様、直通コースありがとう。


 オレは人生のエリートコースは要らないから、コレだけで十分だ。


 不思議だ、なぜか……なぜか上手く行く気がする。


 後10分もしない内にこの世から消え去るというのに、余裕が生まれてきた。


 自分でも分からないが、変な自信がオレの中に『在る』
 
 
「よっと」


 今日何回目かのフェンス越えだ。


 1回目とは違って見えない所まで『コイツ』がオレの目になってくれた。
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