モバイバル・コード
「ひみつー。龍ちゃんがパンをくれたら教えてあげるね」


「雷也、これ上げてもいいか?」


 雷也の机の上にある焼きそばパンを勝手に渡した。


「ほら、二人の愛の焼きそばパンだ」


 彼女は少しだけ、その細い眉をゆがめた。


 オレはその細長い指から携帯を返してもらうと、彼女はピンク色の本体に金銀のビーズが散りばめられた携帯電話を、オレの目の前で振って見せる。


 じゃらじゃらとつけているストラップの数が、女子高生の携帯電話だと主張しているようだ。


「はい、あたしの番号。今登録して、今すぐだよ」


「分かった分かった、愛梨(あいり)」




──『七枷 愛梨(ななかせ あいり)』




 愛梨の携帯画面に映った名前と番号の横には、プロフィール画像の写真が1枚写っている。


 1年半前に龍一と雷也と愛梨の3人で撮った高校入学の時のプリクラ写真だ。


 幼馴染の3人とも『中学卒業したばかりです!』という感じだなぁ。


 こうして見返すとオレの顔も変わった気がする。


 確かに貧しかったけど……ここまでの気苦労なんてなかったはず。はぁ……人生は面倒な事が連続するもんだ。


 雷也は全く変わらないな。この頃から落ち着いている雰囲気が出てる。
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