モバイバル・コード
 言葉を聞いた瞬間、雷也がピンと来たようだ。演技ではない反応。


「まさか、嘘でしょ!? 本当に出来たの!?」


 オレと愛梨はまだ分からない、『置いておく』って何を?


 携帯……のことか?


 置いて何か意味があるのか?


「二人はまだシックリ来ない様子だね。そこ、見て」

 
 ユウマはホームにある鉄骨の柱辺りを指差した。鉄骨の柱がある位置は、電車の窓から『手が届きそう』な位置。


「それ、柱にボタンついてるでしょ。非常ボタン。四角いケースに囲われてる。そこに携帯が滑り落ちないようにして、接続した充電器と共に置いた。ある機能をつけっぱなしにして」


 確かに、コイツは天才かもしれない。


「動画の『スローモーション機能』をつけたままにして、1週放置したってコトか?」


 まだ愛梨は気づかない様子だ。


 代わりに雷也が説明し始めた。



「ユウマ君がした事は、単純な話だね。携帯をそこに固定しておく。それでまず、片方の電車の速度分だけで撮影が出来る。『スローモーション機能』で撮れないわけがない。

そこの携帯に映る動画は、まず、ユウマ君がいる車両から『後ろの車両』がまず映る。これが①としよう。

次に、外回りからやってくるナツキさんの電車が全て映りこむ。これでナツキさんの電車撮影は終わり。

そのままユウマ君は一周してきて、同じ位置に電車が止まる。

①は、ユウマ君が携帯を置いた位置を起点として、『後ろの車両』を撮影した。

戻ってくる時は当然、『前の車両』部分がうつっている。①'だ。

①と①'を足せば、ユウマ君の車両の全貌が分かる。これが解答……でしょ?」
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