モバイバル・コード
「……いや、よく黙ってた。愛梨に打ち明けたのは、勘違いして欲しくないからだ。雷也は、オレ達二人の為を思って、正しいことをしたんだよ。愛梨、怒らないでくれ」


「……もう、何がなんだか分からなくて……雷也、ごめんなさい」


 愛梨は下唇を噛み締めて、険しい顔のままで、雷也に小さく頭を下げ玄関へと向かった。


「おい、愛梨!どこに行くんだよっ!」


「ちょっと……。一人で居たいの。大丈夫、勘違いしてゴメン」


──『ガタン』


 そそくさとコートを着て、部屋を出て行った。


「雷也、行くぞっ!!」


「龍ちゃん、愛梨の事、頼む」


「どういう意味だ?」


「これは、言わないでおこうと思ったんだけど……ダメ、やっぱり僕の口からは絶対に言えないから。愛梨を追いかけてあげて」


 強い意志を持った、その瞳。


 キリっとした二重まぶたの奥に佇む、その瞳がオレに何かを訴えかけていた。
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