モバイバル・コード
 携帯を見ると時刻は18時ピッタリ。ここに居る全員、同じ時間を過ごしているがそれぞれの環境は大きく違う。

 
 愛梨は……雷也の事を気にしてる様子ではなさそうだ。


「……龍ちゃん、ありがと」


 ビルの明かりが照らす、彼女の横顔が神秘的だった。いつもと違う、幼馴染の表情に、『意識』をしてしまう。


「…いや、いいよ。今考えてる事、当ててやろうか?」


 愛梨はゆっくり、オレの方に顔を向けた。夜陰のマジックによって、彼女が凄く艶(つやや)やかに見える。


「龍ちゃんが当てたらご褒美、上げるよ」


「……景品は?」


「今は、まだ言えない」

 
「なんだ、それ」


「ねぇ、何……?当ててくれるんでしょ?」


「……将来のことに対する漠然とした『不安』」


 彼女は、とても優しく微笑んだ。なぜか、オレは愛梨のこの笑顔を一生胸に焼き付けておきたいと願った。
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