モバイバル・コード
「龍ちゃんっていつもぽかぽかしてるよね。どうして?」


「愛梨の方が熱いだろ、大体、女の方が基礎体温って高いんだろ?」


「あたしは龍ちゃんの方が温かいと思うけど、人の体温って温かく感じるものなのかな」


 久しぶりに落ち着いている。気持ちが、不安が、孤独が、恐怖が。全部自分の中から消え去って、透明さが感じられた。


「将来の不安だっけ。あるだろ、ない奴が居たらそれこそ羨ましい。オレはどこで死ぬのか、そんな事ばかり考えていたよ。

どこか自分を遠くから見ていたんだ。だけど、それが間違えである事に気づいた」


 愛梨と目を合わせずに、正面を向いて独り言のように話した。


「オレは、臆病だから……愛梨や雷也が居てくれて初めて、自分の居場所を持つ事が出来たと思う。

バイトとか生活の大変さに、落ちこんでいたけど……こうして3人でこんな形だけど、一つになる事が出来て……友達の大切さって改めて知ったよ。

人は、一人じゃ生きられないのに、生きられるような顔をしていた自分が恥ずかしいんだ」


 寄り添う愛梨の存在が、まさに今のオレを象徴しているようだった。こうして、人が居るから自分も立つ事が出来る。
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