モバイバル・コード
「龍ちゃんは、偉いよ。あたしも雷也も……ううん、普通の高校生じゃ出来ない大変な道を歩んでいると思う。慶二兄さんも言ってたよね」


「確かに、そうかもしれないけどさ、雷也だった愛梨だって勉強したり部活したり頑張ってるだろ、同じだと思う」


「違うの」


 遮った愛梨の声色は、芯がビシっと通っていた。


「気づいて……無いんだね。龍ちゃん、自分で」


「えっ? どういう意味だ?」


「龍ちゃんさ、一度も人に『文句』言ってないんだよ?腐る事も無く、淡々とアルバイトして生活を支えてるんだよ。

あたし、自信を持っていえるけどあたしと雷也が聞いてないって事は、クラスメートなんて誰も龍ちゃんの愚痴とか、聞いてないよね?」


 思いもかけない事を言われ、頭の中で整理をする。


 が、言葉は出てこない。愛梨はそのまま続けた。


「……あたしは『部活面倒くさい』とか、雷也は『勉強面倒くさい』とか言ってるじゃん。

龍ちゃんさ、どうでも言い事に『面倒くさい』ってぼやく事は、しょっちゅうあるけど、『自分の責任』だと思ったら一度でも面倒だって言ったこと……あった?」



 言ったこと、ないや。
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